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10-9 『パウロ 神のライオン』 [本]

テイラー・コールドウェル(著)『パウロ 神のライオン』は、キリスト教に少しでも興味のある人にはぜひお勧めしたい本。
これまで何人かの人に勧めて、読んだ人には皆、大好評だった。

3巻本、分売不可、合計で1000頁を超す大長編小説。
でも、飽きずに一気に読み通せる。
とにかく面白いし、作家のイマジネーションの凄さに感心させられる作品。

コールドウェルさんという人は、何冊かほかに(キリスト教以外にも)小説を書いていて、受賞作もあるらしい。
でも、日本語で読めて、現在も流通している本は、これだけのようだ。
訳者はあの別宮貞徳さん(監訳)。

パウロというのは、イエス・キリストと同時代の人。
厳格なユダヤ教徒として、はじめは、新興のキリスト教徒を弾圧する側にいたのだけれど、有名な「ダマスコの回心」と呼ばれる出来事で神からの圧倒的な啓示を受け、一転してキリスト教の強力な擁護者・普及者となった人。
初期キリスト教の「教会」の組織づくり、理論的な教学の形成に、最も大きな貢献をした人だ。

新約聖書の後ろのほうにある、「ローマの信徒への手紙」などの「手紙」類の大部分は、パウロが書いたもの。
イエスの生涯と教えを記した4つの「福音書」とともに、パウロの手紙も、代々の信徒によって大切に読み継がれてきた。

私は最初、このパウロの手紙がどうにも難しく、なんだか押しつけがましいおじさんだなぁと敬遠していた。
「~すべきです」とか「どうしてわからないのですか」とか、あまりに「熱い」書きっぷりにヘキエキ。
イエス自身の語りがいかにも柔らかく、あたたかく、ユーモラスなのに比べると、このおじさんは堅すぎて、冗談も通じそうにない。
こんな人がそばに居たら、私など始終叱りとばされてばかりだろう……

でもそのうちだんだんと、いや、そういうものでもないな、と思うようになった。
聖書を読めば読むほど、パウロの言葉がリアリティをもって迫ってくるのだ。
すごいなこの人、この情熱、この使命感、いつも涙を湛え歯ぎしりをするように「イエスの愛」を説いてやまないこの人は、いったい……
その凄さがわかるようになると、今度は逆に、キリスト教って、イエスというよりも、「パウロ教」なんじゃないか、なんて思ったことも。
パウロがいなかったら、キリスト教は今日の姿ではなかったに違いない、パウロこそがすごいんだ!……

でも、今はまた、ぜんぜん違う捉え方になっている。
イエスがいて、弟子たちがいて、パウロが現れ……それは偶然ではなく、誰の功績なんて次元でももちろんなく、すべてが1つの出来事、起こるべくして起こったこと、まさに「天の配剤」なのだと。


前置きがすご~く長くなりました。

それで、この小説は、そんなパウロを主人公に、生い立ちから、死を予見させるローマへの旅立ちまでを描いた、大河小説です。
イエスとその母マリアと、パウロとが、(すれ違いだけど)出会う場面など、忘れがたく美しいシーンがたくさんある。
まるで、イエスの瞳の色、その場の街のざわめき、光や風などをまざまざと感じられそうなほど。
もちろん聖書にはそんなシーンは書かれていないけれど、きっとあっただろう、あってもおかしくない、と思わせる筆致なのだ。


もう1冊、これは小説でなくて、より客観的にパウロを描いた本も、最後にご紹介しておきます。
『キリストを運んだ男――パウロの生涯』。
著者の井上洋治さんは、カトリックの神父さん。
たくさんの著書があり、この人もまた、カリスマ的なパワーをもった宣教者です。
井上洋治さんはパウロのことを「宗教的大天才」と呼んでいます、なるほど……


パウロ、神のライオン(3冊セット)

パウロ、神のライオン(3冊セット)

  • 作者: テイラー・コールドウェル
  • 出版社/メーカー: 三陸書房
  • 発売日: 2005/05
  • メディア: 単行本



キリストを運んだ男―パウロの生涯

キリストを運んだ男―パウロの生涯

  • 作者: 井上 洋治
  • 出版社/メーカー: 日本基督教団出版局
  • 発売日: 1998/06
  • メディア: 単行本


追記:amazon で品切れとなっていることがありますが、必ずしも出版元で品切れになっているわけではありません。誤解を招きやすいのですが、amazon も、言ってみれば1つの本屋さんなので、本屋さんの店頭で在庫がなくなっているというだけなのです。
もし amazon で「品切れ」だったら、版元に問い合わせてみてください。
http://www.sanriku-pub.jp/home.html


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