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10-45 カザルスを守る会 シンポジウム [パウゼ]

2010年11月16日、カザルスホールを守る会のシンポジウムに行ってきました。
東京・下北沢の北沢タウンホール。

「カザルスホールを考える」と題して、会の最初と最後にチェロの演奏、前半が6人のパネリストそれぞれの発言、後半が討論。

キャパ300名ほどの会場は、8割ほどの参加者だったでしょうか。
テレビ、新聞その他、記者の姿がちらほら。


ちなみに演奏曲目は:

最初がD.ポッパー「レクイエム」(3台のチェロとピアノ)。
 (カザルスホールのオープニングで、岩崎淑さんたちが演奏した曲)
最後が、カザルスのおはこ「鳥の歌」。

演奏は、岩崎洸、堀了介、堀沙也香、岩崎淑の各氏。


仕事があったので前半までしか聞けませんでしたが。
パネリストの6人がそれぞれカザルスホールを考える上での多角的な視点を提示してくれて、それぞれに面白く、考えさせられました。

後半では発言もされたそうですが、客席にはホールの設計者・磯崎新さんも参加されていました。


シンポのコーディネーターは建築家の兼松紘一郎さん。

1)上野の奏楽堂の保全・移築に携わった経験のある鈴木博之さんの話。
東京の近代建築について、建築史の視点から、保全されたり解体されたりといった例を挙げて概説。

2)カザルスホールの音響設計を担当した永田穂さん。
このホールの音響がどのように設計されていて、どんな特色があるか。
磯崎新さんと一緒にホールの音響づくりに苦心した話。
やっぱり、モノづくりの現場に居る人の話はとてもヒューマンで、胸が熱くなります。

3)音楽家・発起人の岩崎淑さん。
パブロ・カザルスとのエピソードと、ホール命名の経緯について。

4)オルガニストの廣野嗣雄さん。
オルガンの歴史をざっと概観し、日本の、そしてカザルスのオルガンの特色について。
「木と皮と、自然の素材だけで作られたカザルスのアーレント・オルガンは、メンテナンスをきちんとしないとダメになってしまう。現在、オルガンのメンテナンスはどうなっているだろう? 心配です」

5)作曲家の池辺晋一郎さん。
まとめ役としてさすが上手に締めて、胸を打つお話でした。
「何かというと『経済』が優先される世の中だけど、経済は『何かのためにある』ものであって、それそのものは目的ではなくて、手段にすぎないのでは?」
「ホールは生き物であり、長い時間をかけて育てていくものである」


本当に、そうだなぁと思います。

お金は何かのために使うものであって、その何かは多分、目には見えず数字にも現れてこないけれど、人間が人間らしく生きていくために絶対に必要なもの、なんだと思う。


最後に兼松さんが池辺さんの話を受けて、カザルスホールを現在所有しているのが教育機関であることに希望をつなぎたいのです、と発言していましたが、それも心から共感。


「目には見えないけれど価値あるもの」を若い人たちに伝えていくのが、教育の仕事ではないかな?


会の前半を通して、現在の所有者を「ケシカラン!」と責めるとか、皆で気勢をあげるといった雰囲気ではなく、パネリストとして所有者の関係者が参加していてもいいのでは?とさえ思えるような、落ち着いた、大人の雰囲気でした。


残すのでも、壊すのでもいい。
とにかく、所有者の人たちの肉声、ヒューマンな言葉が聴きたい。

沈黙のまま、いつの間にか解体作業が始まってました。なんてことだけにはならないでほしいし、それはやはり教育者として、しないでほしいな。

そんなふうに思いつつ、帰ってきました。


カザルスホールを守る会:
http://casals.us/ja/index.html


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