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11-25 鶴我裕子『バイオリニストは肩が凝る』 [本]

お久しぶりです。

今年の夏は「節電」。不景気だというのに、やたらに長い盆休みとなりました。

休みの前は必死の形相で仕事。
休みに入ったら廃人同様でゴロ寝。

でも、長野の澄んだ冷気のなか、少し人間らしい気持ちを取り戻して、仕事場に帰ってきました。

*****

この本は2005年刊。副題「鶴我裕子のN響日記」、出版元はアルク出版企画。

ずいぶん長いこと大型書店では平積みのまま売られていて、きっと評判いいんだろうなぁと気になりつつ、手を伸ばさないままでした。

長野にいる母が、「読むものがなくなった~ 何か本もってきて」と言うので、こういう本なら喜ぶかもしれぬ、と思って購入。
ついでに読んでみたら、ものすごく面白かったです。
(母はもともとピアノ弾きで、音楽の本もよく読みますが、なにしろ、ちょっとでも小むずかしいことになってくると「面白くない」とバッサリ。読みそうな本の選定がなかなか難しいのです。)


手許の本は2007年、第4刷となっていますが、これは確かに、売れるでしょうね~

こういうのを読むと、やっぱり、自分で音楽をやっている人の音楽論は面白いなぁ、と改めて思います。
研究者、評論家、歴史家……それぞれの音楽論の面白さはあるけれど、体感的に、生理的に、深ーく納得できるのが、音楽家の発言。

身ひとつで舞台に立ち、高ぶったり卑屈になったり、大失敗をやらかしたり、喝采の至福の瞬間を体験するかと思えば不当な非難も浴び…… そういう経験をみずからしてきた人の音楽論は、ほかには代えがたい含蓄がありますね。

ただ、言葉での表現能力を合わせもった音楽家はとっっっても少ないから……
そして、表現のしかたも独特だったりするから……
(特に日本人の音楽家はその傾向が強い。)

音楽家って何も考えてないおバカではないか。
と世間の人に思われているらしいのが、ちょっと(かなり)残念です。


鶴我さんの文章は、まず細かな表現の部分で思わずのけぞる面白さ満載なのですが、たとえばグレン・グールドについての感想、イヴリー・ギトリス礼賛など、実に深い。感心。共感。
このひといいなぁ、と思ってしまいます。

たとえばこんなとこ(サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番についての項)。

サン=サーンスは、お手軽な作曲家と思われているかもしれないが、「耳に快く、すぐにわかる」ことは偉大な長所である。「むずかしい」のは欠点であろう。理にかなっているから、すっと心に入ってくるのだ。私は、きれいな、甘い、ロマンチックな、粋な、疲れない、あたたかい音楽が好きだ。苦労しないお金も好きです。


はーい。私も好きです。
と、思わず心で手をあげながら、読みました。

まだ読んでいない方、お勧めですよ。



バイオリニストは肩が凝る―鶴我裕子のN響日記

バイオリニストは肩が凝る―鶴我裕子のN響日記

  • 作者: 鶴我 裕子
  • 出版社/メーカー: アルク出版企画
  • 発売日: 2005/07
  • メディア: 単行本



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