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11-22 南條年章オペラ研究室『夢遊病の女』 [コンサート]

じわじわと暑くなってきました。
30度を超えないだけで、こんなに楽なんだな~としみじみ……

*****

縁あって、昨日(2011年7月23日)、千駄ヶ谷の津田ホールにて、南條年章オペラ研究室主催のベッリーニ《夢遊病の女》を聴いてきました。
ピアノ伴奏・演奏会形式によるオペラ全曲シリーズの第11回目、ベッリーニ全曲シリーズの第1回だそうです。

オーケストラの音楽が聴けないのは残念ではありますが、下手に中途半端な演出がついている上演よりも、演奏会形式のオペラ、というのもなかなか面白くて好きです。

ピアノ伴奏だけ、というのもいっそ潔い。
合唱と、ソロと、ソリストたちの重唱と……

そうか、夢遊病の女って、こういう音楽だったのか……

ふつうのオペラ上演では、舞台装置や衣装の美しさとか、オケの迫力に目(耳)を奪われて、歌そのものの細かなニュアンスにはあまり注意がいかないので。

歌と声の美しさ、迫力を堪能できました。



主人公アミーナのソプラノ、平井香織さんは、特に「夢遊病状態」のときの発声・歌唱がなんとも美しく、感心。
ロドルフォ伯爵(領主)は、今回はバリトンでの上演ですが、折河宏治さんが素晴らしかった。声を聴いているだけで幸せ……という感じ(もちろん、舞台での立ち姿も立派です)。

ほか、もう1人のソプラノ(リーザ)の村瀬美和さんは可憐で華やか、主人公の母親役のメゾソプラノ、斎藤佳奈子さんも存在感がありました。


いちばん素晴らしかったのは合唱。

上手く作られているなぁ、とベッリーニの作曲に改めて感心したし、やっぱり人間の声っていいなぁ……としみじみ感動しました。

これはやはり、生の上演だからこそ味わえる感動ですね。


南條年章さんのプログラム解説も勉強になります。
南條さんはプッチーニの評伝 ↓ を書かれています。

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プッチーニ (作曲家・人と作品シリーズ)

プッチーニ (作曲家・人と作品シリーズ)

  • 作者: 南条 年章
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2004/07/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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11-20 バッハ・コレギウム・ジャパン [コンサート]

2011年7月14日(昨夜ですね)、東京オペラシティ大ホールで、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の第94回定期公演、「狩のカンタータ」を聴いてきました。

BCJがずっと続けてきた「教会カンタータ全曲演奏」のシリーズも、残すところあと4回となった(すごいな~~)ということで、今回は、次なる目標、「世俗カンタータ全曲シリーズ」の第1回だそうです。
同時に、名古屋(しらかわホール)での定期公演も始めるとのこと。


静かに、たゆまず進化を続けるBCJ。すごいものです。


前半はBWV143aのセレナータ《日と年をつくる時は》。
後半が、「狩のカンタータ」として知られる、BWV208《心躍る狩こそわたしの悦び》でした。


やはり後半が聴き応えがありました。

テノールの櫻田亮さんが素晴らしかったです。
鈴木雅明さんのチェンバロ伴奏のソロ〈エンデュミオンの誘惑〉が、全曲でいちばん印象に残っています。

真ん中のいちだん高いところに「コルノ・ダ・カッチャ」(昔のホルン)の2人。
高らかに「狩のホルン」が鳴り響いて全曲の始まり……
なのですが、この楽器、ピッチのコントロールがものすごく難しそうです。
上手いのか下手なのかよくわからない(失礼)。
「高らかに」という感じとは、いまいち違う様子ですが、当時もこんなふうだったんだろうなぁと、かえってリアルに狩の情景が思い浮かびました。いい味出してます。

ほかにも、リコーダーやオーボエ、通奏低音の楽器たちなど、1つ1つの楽器が生き生きと存在感を発揮していて、オーケストラだけど、室内楽的な面白さも堪能できるのがBCJのコンサートの嬉しいところ。


ソプラノのアリア〈王は良き牧人〉は、きっと、メロディを聴けば誰もがどこかで聴いたことがある……と思うはずの名曲。
歌い手はジョアン・ランさん、声がふわっと柔らかく優しく、素敵でした。
やっぱり、いい曲だなぁ。
ほんわか幸せになります。
「良き牧人の見張るところ、羊は心おきなく草をはむ」……


うーむ。羊になりたい。
できれば涼しい高原で3カ月くらい……


http://www.bach.co.jp/japanese_page_top.htm


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11-19 オペラ「ブリーカー街の聖女」 [コンサート]

暑い、暑い;;

早くも梅雨が明けてしまって、今年の夏はいったいどーなるのだ。

暑いのが苦手でいつも夏は仮死状態の私です。
今からこれでは先が思いやられます。

*****

今日は、いえ、昨日は、でした。
新国立劇場(中劇場)に、東京オペラ・プロデュースの第88回(すごい!)定期公演の、オペラ「ブリーカー街の聖女」を観てきました。

メノッティの生誕100年を記念しての、原語では初演、という力のこもった舞台です。
台本もメノッティ、珍しい英語のオペラ。

1954年にブロードウェイで初演されて大人気を博し、ピュリッツァー賞も受賞している作品だそうです。

とても、とても面白かった。
筋書きとしては、言ってみれば、キリスト教をめぐる信仰と懐疑の葛藤、みたいなものなので、興味を持てない人も多いかもしれませんが……

メノッティの音楽が、めちゃくちゃ面白い。
2時間半、まったく飽きませんでした。
オケと歌の絡み、軽さと重さ、シリアスとコミカル……千変万化、自由自在の作曲技法には参りました。

こんな面白いオペラがあまり上演されないなんて、もったいない。

筋書きがネックなのかもしれませんが……
私にはとても興味深く、主人公とその兄のまったく異なる生き方・心情が、実のところ作曲者メノッティが自分の内に抱え込んだ矛盾と葛藤を、2人の登場人物に託して表現した、ということが、とてもよくわかった。
なるほどなるほど、とけっこう冷静に観ていたはずが、最後の最後で主人公が息絶えるところでは、いきなり泣きそうになったので自分でも驚いた。

ソプラノの橋爪ゆかさん、テノールの羽山晃生さん、声も演技も存在感があって良かったです。


2回のみの公演。
明日(じゃなかった今日)、キャストを変えて、第2回の公演があります。

興味のある方はぜひ。なかなか生で観るチャンスは少ないオペラと思います。

http://operaproduce.web.fc2.com/


〔7月31日付記〕
JAZZ TOKYOというサイトに、「佐伯ふみ」という筆名でコンサート・レビューを書いています。
31日にサイトが更新され、この公演のレビューが掲載されました。
ご興味のある方はどうぞご覧ください。
http://www.jazztokyo.com/live_report/report350.html


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11-18 N響 Music Tomorrow 2011 [コンサート]

今日は、あ、違った、もう「昨日」ですね。
オーケストラの演奏会を聴いてきました。

響きの良いホールで高水準のオーケストラを聴く、というのは、やっぱりいいですね。
コンサートは久しぶりだったし……
出だしの音を聴いただけで、なんてきれいなんだろう、と、じーんとしてしまいました。

曲目は:

尾高尚忠『フルート小協奏曲』Op.30a(初版の小編成版)
アンリ・デュティユー『コレスポンダンス』(日本初演)
西村朗『蘇莫者』(今年度の尾高賞受賞作。天王寺楽所雅亮会による舞楽つき)


尾高さんの曲でフルート・ソロを吹いたN響の神田寛明さん、音が本当にきれいで、う・巧い!

第1楽章では酸欠になりそうな長い長いフレーズを、最終楽章では速い細かいパッセージが延々と続く無窮動の音楽を、楽々・軽々と美しく吹き抜けていました。ブラボー。


デュティユーの曲はもう一度聴いてみたい。印象的でした。
ソプラノと管弦楽のための曲。
作者も内容もまったく違う詩や手紙(ゴッホが弟に宛てた手紙もあった)が5つテクストに選ばれていて、歌もオケもそれに応じて、微妙に、でもはっきり世界を変化させる。

ソプラノのバーバラ・ハンニガンさん、青紫のドレスがセンスよく素敵である。
5つの世界を表現するのに声の音色、歌い方をはっきり変えていてすごい。
それぞれがまた印象的な美しい声なのです。


『蘇莫者』は完成度の高いCDが出ていて、これまでに何度か聴いていたけれど、生で演奏されるときの、あのめくるめく「西村サウンド」は特別。楽しみにして出かけました。
多彩な楽器が共鳴しあって、「いったいどこまでいってしまうんだろう?」とはらはらするくらい、うなりのような響きが次々増殖・拡張して天空へと立ち昇っていく。
期待にたがわず、堪能できました。

指揮はなんと! 1977年生まれ、34歳のパブロ・ヘラス・カサドさん。
10月にはベルリン・フィルにデビューするのだとか。いやはや。


こんなに面白いプログラムで、こんなに高水準の演奏なのに、お客さんが少ないのはもったいなかったけれど。
とても満ち足りた気持ちで演奏会場をあとにしました。




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西村 朗:オーストラのための<蘇莫者>

西村 朗:オーストラのための<蘇莫者>

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: (株)カメラータ・トウキョウ
  • 発売日: 2009/12/20
  • メディア: CD



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11-10 河村尚子リサイタル [コンサート]

地震からちょうど4週間が経ちました。
余震は少なくなったな~……と思っていたら、ゆうべのは大きかった;;

東京のあの揺れ程度でもこんなに不安になるのに、震源に近い被災地の人たちの恐怖はいかばかりかと思います。
お願いだから、もう、これ以上痛めつけないでほしい。祈らずにいられません。

*****

そんななか、何ヶ月ぶりかで、音楽を聴くことができました。

河村尚子さんの「リストへの旅――生誕200年に寄せて」です。
2011年4月7日(木)、上野文化会館。「東京・春・音楽祭」の一環。

公演中止になっていないか、これまで何度ネットで確認したことか。
勇気を出して舞台に立ってくれた河村さんに、心から感謝です。

冒頭の2曲は続けて演奏。
J.S.バッハ(ブゾーニ編):コラール「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ」と、シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より)

呟くような祈り、魂からの問いかけ、そんな演奏でした。
「鎮魂」の言葉が心に浮かびました。

客席で、深く頭を垂れて聴いている人、身を乗り出して食い入るように聴いている人……皆それぞれに、演奏者と心を合わせて祈っている、そんな雰囲気を感じました。

震災のあと、初めて聴く音楽として、これほどふさわしいものはない。そう思って、心が震えました。なにか運命的なことまで感じたりして……


このプログラムは当初からのものだったようです。
この曲目だからこそ、今この状況でも弾ける、弾きたい、と河村さんは思ったのかも。

コンサートが開けるかどうか。その不安もあっただろうし、誰もが皆そうだったように、目の前のことにとても手を付けられない、集中して練習に向かうことができない、そんな精神状態でもあったと思うのですが。
その状態で、よくぞこんなに素晴らしい演奏ができるものです。
根性あるなぁ。惚れちゃうなぁ。


演奏家は舞台に立ったら言い訳がきかないから……
バックステージでどんなことが起こっていても、その日その時の1回かぎりの演奏で、「良い」「悪い」の評価をされてしまって、ダメだと思ったら2度と聴きにこないお客さんもいる。


音楽の世界のその厳しさ、潔さが好きだし、コンサートで素晴らしい演奏に出会えるということは、やはり、一期一会の奇跡の出来事なんだとつくづく思います。

このコンサートが聴けて良かった。
また河村さんの音楽を聴きに行きたい。そう思いました。

***

バッハ=ブゾーニ以外の曲目は……

・リヒャルト・シュトラウス:5つの小品op.3

16歳の時の作曲だとか。すごい。やっぱりリヒャルト・シュトラウスって天才なんだな。と納得。
こういう曲を生で聴けたのは嬉しかったです。
河村さんのコンサートは曲目にも工夫があって面白い。
アンコール曲もとても良かったです。あれ、なんだろう?

・リストのトランスクリプション(編曲)より3曲

ワーグナー「イゾルデの愛の死」
シューベルト「糸を紡ぐグレートヒェン」「水車小屋と小川」
シューマン「献呈」

・リスト:「愛の夢」と「ダンテを読んで」


↓ 河村さんのCD。筆者は未聴。

夜想~ショパンの世界/河村尚子デビュー

夜想~ショパンの世界/河村尚子デビュー

  • アーティスト: 河村尚子,ショパン
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2009/03/25
  • メディア: CD



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11-1 片岡詩乃ハープリサイタル [コンサート]

2011年、新年明けましておめでとうございます。

年末年始の休みは久しぶりに仕事から離れて、元気に過ごしました。
親戚一家が泊まりに来たり、お墓参りに出かけたり。
数えてみたら年明けの4日間で会った人は17人。
史上最高のにぎやかなお正月でした。

久しぶりにコンサートのご報告を。

*****

2010年12月17日、銀座・王子ホールにて、片岡詩乃さん(ハープ)のリサイタルを聴きました。

片岡さんは、現代の音楽を積極的に演奏してきたハーピストだそうで、曲目が非常に面白く、聴きごたえがありました。

前半:
フォーレ「塔のなかの王妃」
サルツェード「シンチレーション」
武満徹「海へⅢ」(フルート:近藤孝憲さん)

後半:
マリー・シェーファー「アリアドネーの冠」
高橋悠治「そしてまた」(委嘱新作初演)
ブリテン「組曲」


面白かったのは、構成の巧みさでブリテン、そして多彩な曲想でサルツェード(サルゼード)。

力作はシェーファー。
ハープのほかにたくさんの小さな打楽器系の楽器を一人で扱う曲で、演奏者の孤軍奮闘ぶりを眺めているだけでも楽しい(ごめんなさい)音楽。
それぞれの楽器が、いかにものはまりどころで美しい音を響かせて、飽きさせず、印象深い曲でした。

シェーファーで面白いのが、これだけ多彩な楽器を使うのに、展開の意外性はあんまりない、というところ。
楽器の使い方、響き、音型、それぞれが、多分そう来るだろうなと思うと、その通りに来る。
この安心感、予定調和が、決して陳腐にはつながらないのが面白い。
一つ一つの響きの美しさが、あとあとまで記憶の中に余韻を残す音楽。
これがシェーファーらしさなのかな?

高橋悠治さんの新曲。
もっと面白くできたのでは、と思った。
音と音とのあいだの、えもいわれぬ間(ま)、空間が、もう少し……


どれも大曲、力作ぞろいで、演奏者は大変だったろうと思いました。
ハープをソロで聴く機会はあまりないので、演奏者の技量とか曲の難しさは、申し訳ない、よくわからないのですが……
これだけのプログラムを一晩で弾きこなすというだけですごいことなのでしょう。


話がそれるようですが、私の父は絵描きで、時々、個展を開いていました。

開くにはお金がかかるので、出した絵がそれなりに売れてくれないと経済的には苦しいのですが……
たまに、売れる売れないは度外視して、今の自分を確かめる、という意味で、個展を開くときもあったように思う。

片岡さんのリサイタルを聴いていて、なんとなく、そんな「個展」のような気概を感じさせる音楽会だなと思いました。


片岡さんのCDを検索してみたら、こんなCD ↓ がありました。画像がないのが残念。



Shima Chromatic

Shima Chromatic

  • アーティスト: 小林史真,ガーシュウィン,ヘイゼル,サティ,バッハ,ムーディ,ドビュッシー,田村緑,片岡詩乃,稲野珠緒,メルヴィン(アンドリュー)
  • 出版社/メーカー: フォンテック
  • 発売日: 2002/12/21
  • メディア: CD



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10-44 藤村実穂子リサイタル [コンサート]

2010年11月11日、藤村美穂子さんのリサイタル「リーダーアーベントⅡ 生誕200年 シューマンをうたう」を聴きました。
於:紀尾井ホール
主催:新日鐵文化財団


オペラ歌手のうたう歌曲(リート)のコンサートは、がっかりすることが多いけれど……
充実した、感動的な音楽会でした。

リートの世界に、新しい日本人演奏家の誕生!という気がして、これからが楽しみ。


前半いきなりの「リーダークライス」は、舞台にも客席にも緊張感がただよったまま……
音楽の世界で遊ぶというよりは、何やら居合い抜きか何かの真剣勝負(見たことないけど)を固唾をのんで見守っているような感じ。

後半のマーラーになってやっとほどけて、伸び伸びしてきた感じ。
マーラーは藤村さんの音楽の色にとても似合っているような。
リヒャルト・シュトラウスなんてとてもはまりそうだけど。

ブラームス「ジプシーの歌」Op.103からの8曲もそれぞれに楽しかったけれど、第7曲「時々思い出す」は、とっても可愛いい曲でした。


世界を舞台に活躍する一流の演奏家に対して、とてもとても僭越な言いようなのはわかっているけど……

もっと自由に、もっと可愛らしく、もっと自然に、もっといいかげんに、なれるといいなと思うし、きっとなっていける。その萌芽がこの夜のコンサートにはあったと思う。

人間は真剣勝負だけで生きているわけではないし、すべてを完璧にコントロールして生活しているわけじゃない。
ダメだけど、愛おしいのが人間。
歌は、そんな人間そのものだから……


CDもサインもほしかったけど、CD売り場はいつも黒山の人だかりで近づけませんでした。
しょうがないので、手が痛くなるくらい拍手して、幸せな気分で帰宅しました。

ピアノのウォルフラム・リーガーさんが素晴らしかったです。
ハルトムート・ヘルさんの弟子でもあるそうな。
振幅の激しい繊細な表現と、頬を紅潮させながらの妙にキビキビした挙措動作が師匠を思わせて、なんだか微笑ましかったです。



ドイツ歌曲集

ドイツ歌曲集

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: フォンテック
  • 発売日: 2010/11/21
  • メディア: CD



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10-43 小倉貴久子 ショパン・コンサート [コンサート]

2010年11月9日、小倉貴久子さんほか演奏の室内楽演奏会を聴きに出かけました。

「ショパンの愛したプレイエル・ピアノ 弦楽器と奏でる美しい詩(うた)」。
於:第一生命ホール
主催:静岡文化芸術大学 文化・芸術研究センター、NPO法人トリトン・アーツ・ネットワーク/第一生命ホール
協力:浜松市楽器博物館

プレイエル社の1830年製フォルテピアノを使った演奏会。
前半がピアノのソロ作品と、チェロとピアノのデュオ、後半がピアノ協奏曲第2番の室内楽版(ピアノ+弦楽五重奏)という面白いプログラム。

コメントすべき話題の多いコンサートですが、長年のファンとしては、あの小倉さんの演奏でショパンを聴ける!というだけで、すでにワクワク。

前半のソロがまず聴き応え十分でした。
「華麗なるワルツ」Op.34-1で華やかにオープニング。
2曲目のイ短調マズルカOp.17-4 が素晴らしく、聴衆の集中力がここでぴんと張りつめて、舞台に集中していくのを感じました。
遺作の嬰ハ短調ノクターン(レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ)は、数年前に公開されたロマン・ポランスキーの映画「戦場のピアニスト」でも印象的に使われていた名曲。

小倉さんのピアノは本当によく歌う……生き生きとして躍動的で……聴くたびに嬉しくなってしまいます。

他の人がピリオド楽器を弾くと、最初から最後までモダンとの楽器の違いを感じさせられてしまうことが多い。
でも小倉さんの演奏はいつも、聴き始めてすぐに、楽器の違いなんて関係なくなって、そこから響いてくる音楽にすっかり没頭して楽しむことができる。


前半の最後は花崎薫さんのチェロで「序奏と華麗なるポロネーズ」Op.3。
後半はピアノ協奏曲第2番の室内楽版。
(弦楽パートの演奏は、桐山建志、藤村政芳、長岡聡季、花崎薫、小室昌広の各氏)

めったに生では聴けないプログラムで、興味深く、楽しめました。


このコンサートは、一種の「産学協同」のプロジェクトで、浜松にある静岡文化芸術大学が、音楽学研究の成果を実際のコンサートで世に問う、という姿勢から始めたもの。

同じ浜松の楽器博物館が収蔵品を提供し、その企画に演奏家たちとホール(トリトン・アーツ・ネットワーク)関係者が共鳴して……と、人の輪が広がって、これまでに4回、浜松と東京で他では聴けない興味深いコンサートを開催してきました。

今回で一応のシリーズ完結だそうですが……
同じような曲目が並ぶコンサートが多いなか、本当に貴重なチャレンジだったと思う。

最後だなんて言わないで、続けてほしいのだけど。


アンコールは「別れの曲」の室内楽版。編曲は小倉さんでした。


下記は、2006年に行われたコンサートで演奏された、室内楽版ピアノ協奏曲第1番の録音です。


ショパン:ピアノ協奏曲第1番 室内楽版 [浜松市楽器博物館コレクションシリーズ9]

ショパン:ピアノ協奏曲第1番 室内楽版 [浜松市楽器博物館コレクションシリーズ9]

  • アーティスト: ショパン,なし,小倉貴久子/桐山建志/白井圭/長岡聡季/花崎薫/小室昌広
  • 出版社/メーカー: 浜松市楽器博物館
  • 発売日: 2007/01/28
  • メディア: CD



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10-41 作曲家の個展 [コンサート]

だいぶ寒くなってきましたね。

雨の休日、窓から外の風景を眺めながら、ぼんやり過ごす。

根が無精なたちなので、こういう時間も大好きです。


*****

2010年10月5日、サントリーホールで、「作曲家の個展」第30回記念特別演奏会を聴きました。

望月京さん、北爪道夫さん、近藤譲さん、松平頼則さんのオーケストラ作品4つ。
演奏は東京都交響楽団、指揮は梅田俊明さん。
http://www.suntory.co.jp/news/2010/10809.html


現代音楽のコンサートで、これは面白い!と思える作品にはなかなか出会えない。
一緒に出かけた友人がそんなふうに言っていましたが、そのとおり……

素人だから作品の優劣など判断できないけれど、とにかく聴いて面白いか、自分が好きかどうか、それだけ。
ひと晩のコンサートで、1つくらい心に響いてくる作品に出会えれば嬉しいという感じ。


この日は、北爪道夫さんの『管弦楽のための協奏曲』がとても面白くて、もう一度聴きたい、と思いました。
(下に挙げたCDに収録されています。たぶん2003年の初演時の録音)


松平頼則さんの『ピアノ協奏曲』は遺作・初演でした。
この作品について、プログラムに野平一郎さん(ピアノ演奏と、この曲の楽譜校訂を担当)が書かれた作品解説がとても感動的です。

松平さんからある日この曲のスコアが送られてきて(誰かに委嘱されて作ったわけではなく、演奏機会のアテがあったわけではない)、思いがけない贈り物に、御礼の連絡をしなければ、と思っていた矢先に松平さんの訃報が届いた。
その後、なんとか演奏の機会を作ろうと思いながら果たせず、10年弱もの歳月が流れてしまったが、この機会に、野平さん自身がパート譜を起こし、書き間違いや見にくい箇所は補って、上演にこぎつけたとのこと。


思いもかけず、作曲家から最後の作品を託されることになった野平さんの心情を思うと、10年は長かっただろうなぁと思う。

それに、作曲家がすでに亡くなったあと、残された手書き総譜から作曲者の意図を推し量りつつ、実際に演奏に使えるパート譜を起こしていく作業は、(楽しさもあっただろうけれど、)ものすごく忍耐のいる、大変な作業だっただろう。
(校訂楽譜の編集をしたことがあるので、それがいかに時間と手間暇とイマジネーションの必要な作業かは、想像がつく。)

この日は野平さんにとっては感無量の舞台だったと思うし、ふだんの演奏にまして、尋常ならざる熱演だったのはよくわかった。
切れ切れに聞こえてくる野平さんのピアノの音色、間合い、まさに「渾身の歌」と言っていいような切々たる音楽と気合いには、はっとさせられる瞬間が多々あった。

ただ、「切れ切れに聞こえてくる」と書いたけれど、本当にそんな感じで、ハープ2台にマリンバ3台を含む大編成のオケがピアノにかぶってしまって、肝心のピアノの音が聞こえないのだ。それでずいぶん、もどかしい思いをした。


とにかくも、これが初演。
もしも松平さんがこの演奏を聴いていたら、もしかしたら改訂の筆を加えたかもしれないし、新たなヴァージョンの再演が聞けたかもしれない。
そんなふうに思いました。



作曲家の個展 北爪道夫

作曲家の個展 北爪道夫

  • アーティスト: 北爪道夫,外山雄三,板倉康明,東京都交響楽団
  • 出版社/メーカー: フォンテック
  • 発売日: 2004/04/30
  • メディア: CD



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10-39 イヴ・アンリのショパン [コンサート]

3連休、いかがお過ごしですか?

私はこれから1泊2日で長野に出かけ、夏の終わりの「カナカナ」を聴いてきます。
今日は急ぎ足でとりあえず更新を。


今週は3つのコンサートを聴きました。

月……紀尾井ホール(「ショパン 三夜」)
水……オペラシティ(バッハ・コレギウム・ジャパン)

そして土曜日、先日ご紹介した(記事No.10-37)御喜美江さんのリサイタル。

高橋悠治さん、coba さんとのトークなども交え、聴き応えのある、楽しいコンサートでした。
満員のお客さんの反応がとてもよく、終始なごやか~な雰囲気。

これについてはまた機会を改めて書きたいと思います。

御喜さんのブログ ↓ はお勧め。
コンサートを前にした演奏家の日常がほのぼのと綴られています。
http://mie-miki.asablo.jp/blog/


******

紀尾井ホールの「ショパン生誕200年」シリーズの第一夜、「サロンの輝き」と題されたイヴ・アンリさんのリサイタルを聴きました。
(2010年9月13日 主催:新日鐵文化財団)

前半の冒頭がモーツァルトのホ長調のピアノ・トリオ(KV412)、それに呼応して後半の冒頭がショパンのト短調チェロ・ソナタOp.65。
チェロが遠藤真理さん、ヴァイオリンは川田知子さん。

この2曲のみ現代のピアノを使い、あとはすべてピリオド楽器(1848年製のプレイエル)でイヴ・アンリさんのソロ――ノクターン、エチュード、前奏曲、マズルカなどの名曲づくし。


一夜の演奏会で、同じピアニストが現代のピアノとピリオド楽器の両方を弾くのは珍しいと思う。

現代ピアノのパワフルでクリアな音を聴いた耳だと、どうしてもピリオド楽器の響きにある種のもどかしさを感じてしまうのだけれど……
後半、曲が進むごとにイヴ・アンリさんの演奏の凄みというのか、ニュアンスの豊かさが心に沁みてきて、この抑制、この気品は、やっぱりショパンならではと思い、演奏者のセンスに感心しました。


この人はもともとシューマン弾きとして名を馳せたひとらしい。

改めて、シューマンも聴いてみたいな、と思いました。


「ショパン三夜」の次回は10月、ポーランドの若手ピアニストが登場するようです。 ↓

http://www.kioi-hall.or.jp/calendar/concert_h.html






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